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2020年6月19日 (金)

ジーン・リース著「サルガッソーの広い海」小沢瑞穂訳

まずこの本を読むきっかけからお話ししましょう。

昨年日経紙に連載されていた池澤夏樹氏の連載小説「ワカタケル」がとても面白く、池澤さんの他の著作を探しているときに出会ったのが『池澤夏樹の選ぶ世界の十大小説』でした。

その10冊は

この中には私が大好きな作品も入っていたので、これはいいぞ!と思い端から読むことにしました。現在7冊を読了。

(ついでながらモームの世界十大小説は
1 フィールディング/トム・ジョーンズ
2 オースティン/高慢と偏見(自負と偏見)
3 スタンダール/赤と黒
4 バルザック/ゴリオ爺さん
5 ディケンズ/デイヴィッド・カパーフィールド
6 フロベール/ボヴァリー夫人
7 メルヴィル/白鯨
8 ブロンテ/嵐が丘
9 ドストエフスキー/カラマーゾフの兄弟
10 トルストイ/戦争と平和     )

 

さて、「サルガッソーの広い海」

みすず書房版は表紙の装丁も素敵です。
Kimg0924

サルガッソーとはカリブ海の東端、南米ベネズエラにも近い辺りです。
小アンティール諸島の中のドミニカ島が舞台。(ドミニカ共和国とは別の小さな島です)

あらすじ

第1章…私(アントワネット)はここで生まれた白人の女の子。この島で白人はかつて奴隷所有者であったが、奴隷解放後には「白いごきぶり」と蔑まれている。イギリスから来た白人は「本物の白人」などど呼ばれている。
母、障害のある弟、黒人の乳母のクリストフィーヌらとつつましく暮らしてる。父はすでに亡くなったようだ。
若く美しい母は、イギリス人の「本物の白人」Mr.メイソンと再婚をする。かつての奴隷所有者らは土地を広く持っていたため、母の資産目当ての結婚だった。
或る晩Mr.メイソンが中国系の召使を雇いたいと言う。「そんなことを召使のいる前で言うものではない」と叔母は忠告する。その晩家は黒人たちに囲まれ石が投げられ火がつけられる。
弟は亡くなり、次第に母は錯乱し、アントワネットは尼僧院の寄宿学校へ入ることになる。

第2章…話はアントワネットが新婚旅行に出かけるところから始まる。夫は本物の白人であるMr.ロチェスター。父と兄から疎まれているような節のある彼もまたアントワネットの資産目当てである。母は錯乱したままに乱れた生活をし、ひっそりと亡くなっていた。
旅行先はグランボワ(高い森)。アントワネットの母が所有していた土地である。深い森を通って海の見える場所に立つ家に、数人の召使と共に滞在する。アントワネットはこの地に深く馴染んでいた。近くには乳母クリストフィーヌの住む家もある。クリストフィーヌは土地の黒魔術であるオービアを使うという。「バーサ」とアントワネットの本名で呼ぶ夫に「いいえ私はアントワネットよ」。

夫婦の間はうまくいかない。英国人の夫はこの地も現地人のことも好きになれない。そんな時に近くに住むアントワネットの異母弟と名乗る男から密告の手紙が届く。奴隷に横暴であったアントワネットの父のこと、狂乱した母のこと、アントワネットに最初の男がいたことなど書き連ねてあり、苦悩し猜疑するロチェスター。アントワネットがクリストフィーヌを頼っていることも気に入らない。アントワネットの隣の部屋で召使の女を抱くロチェスター。心身が不安定になっていくアントワネット。アントワネットを連れてこの地を去りイギリスに向かうロチェスター。

第3章…イギリスに向かう途中でロチェスターの父と兄は亡くなりロチェスター家の財産をすべて相続することになった夫。イギリスのロチェスター家の屋敷のひと部屋に幽閉されるアントワネット。蝋燭の炎がゆらめいて…。

あらすじと言うのは筋にしか過ぎないので、そのまわりにある雰囲気を感じ取ることが大切と思います。是非本作品を読んでいただきたいです。

作者のジーン・リース(1890^1979)もまたカリブ海で生まれた白人系の人です。16歳でイギリスに渡りヨーロッパで生涯を終えました。
アントワネットの思いはジーン・リースの思いでもあったでしょう。

エミリー・ブロンテ「ジェーン・エア」作中の『彼女(バーサ)の母親はクレオールの女で飲んだくれの狂人だったと言う一文に、自身もクレールのジーン・リースは心を痛めたのでしょうか。

バーサが精神に異常をきたしたのは家系のせいではなく、奴隷制度・プランテーション・ヨーロッパの植民地制度のなれの果て、だとブロンテに言いたかったかのもしれません。

「サルガッソーの広い海」は「ジェーン・エア」が発端なのです。
池澤夏樹さんの選書の中に「フライデー、あるいは太平洋の冥界」がありますが、これは「ロンビンソンクルーソ」のアナザーストーリーでもあります。この作品も面白かった。主人公の世界観が180度変わるところが面白い。こちらもお勧めです。

梅雨ですね。この時期にお勧めなのは高村薫「土の記」です。こちらも筋にまとわる雰囲気がすばらしい。

「サルガッソーの広い海」は妙に惹きつけられる作品でした。なのでついついブログが長くなりましたがこの辺で。


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